MENU

お薬のはなし⑨ 経口血糖降下薬 その6~DPP-4阻害薬~

経口血糖降下薬シリーズ第6弾。今回は「DPP-4阻害薬」についてのお話です。

主なDPP-4阻害薬

機序 一般名 主な販売名 備考

インスリン分泌促進系

(血糖依存性)

シタグリプチン

ジャヌビア錠
12.5mg/25mg/50mg/100mg

グラクティブ錠12.5mg/25mg/50mg/100mg

・SGLT2阻害薬(イプラグリフロジン)との配合剤(スージャヌ配合錠)がある。

ビルダグリプチン エクア錠50mg

・ビグアナイド薬(メトホルミン)との配合剤(エクメット配合錠)がある。

アログリプチン

ネシーナ錠
6.25mg/12.5mg/25mg

・チアゾリジン薬(ピオグリタゾン)との配合剤(リオベル配合錠)がある。

・ビグアナイド薬(メトホルミン)との配合剤(イニシンク配合錠)がある。

リナグリプチン トラゼンタ錠5mg

・SGLT2阻害薬(エンパグリフロジン)との配合剤(トラディアンス配合錠)がある。

テネリグリプチン テネリア錠20mg/40mg

・SGLT2阻害薬(カナグリフロジン)との配合剤(カナリア配合錠)がある。

アナグリプチン スイニー錠100mg

・ビグアナイド薬(メトホルミン)との配合剤(メトアナ配合錠)がある。

サキサグリプチン

オングリザ錠2.5mg/5mg

トレラグリプチン ザファテック錠
25mg/50mg/100mg
・100mgを1週間に1回投与する。中等度腎機能障害者は1回50mgを投与し、重度腎機能障害者では投与は適さない。
オマリグリプチン マリゼブ錠12.5mg/25mg ・25mgを1週間に1回投与する。中等度腎機能障害者は1回12.5mgを投与する。

作用

今回紹介するDPP-4阻害薬は、インスリン分泌促進系に分類されるお薬です。インスリン分泌を促進する薬剤と言うと、SU薬やグリニド薬を思い浮かべる人も多いかもしれませんね。SU薬やグリニド薬が膵臓のβ細胞に直接作用してインスリン分泌を促すのに対し、DPP-4阻害薬はインクレチンの作用を増強することで血糖依存的にインスリン分泌を促進し、グルカゴン分泌を抑制するという働きがあります。

インクレチンとは、食事を摂取した時に十二指腸や小腸から分泌される消化管ホルモンの総称です。インクレチンにはGLP-1とGIPがあり、血糖値が上昇すると膵β細胞に作用してインスリン分泌を促進します。また、GLP-1には高血糖時のグルカゴン分泌を抑える作用もあります。インクレチンは高血糖を是正する上で重要な役割を担っているホルモンですが、DPP-4という分解酵素によって短時間で分解されてしまいます。そこで開発されたのがDPP-4阻害薬という薬剤です。DPP-4阻害薬はインクレチンを分解する酵素であるDPP-4の働きを抑えることによって、GLP-1の作用を増強し、血糖値が高い時にインスリン分泌を促進するという特徴があります。

適応

食事療法や運動療法で高血糖が是正できない2型糖尿病に用いるとされています。

副作用

上述した通り、DPP-4阻害薬の血糖降下作用はブドウ糖濃度依存性のため、単独投与では低血糖を起こしにくいと言われています。しかし、他の血糖降下薬(SU薬など)と併用すると、相乗効果により低血糖のリスクが増大する可能性があります。SU薬との併用に際しては、『インクレチン(GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬)の適正使用に関する委員会』により〝Recommendation〟が示されています。(参照:インクレチンとSU薬の適正使用について)※なお、Recommendationの内容は2010年以降一部修正が繰り返し行われており、今後も症例蓄積やデータ解析の結果をふまえて追加修正を適宜行うものとされています。

SU薬とシタグリプチン(ジャヌビア、グラクティブ)との併用で重篤な低血糖を起こすケースとして、以下の5つ特徴が挙げられています。
①高齢者
②軽度腎機能低下
③SU薬の高用量内服
④SU薬ベースで多剤併用
⑤シタグリプチン内服追加後早期に低血糖が出現

Recommendation(2011年9月29日修正版)では、以下のような記載があります。

・高齢者や軽度腎機能低下者にSU薬の使用は極めて慎重でなければならない。投与して効果が少ない場合、SU薬は安易に増量しない。

・高齢者・腎機能低下(軽度障害を含む)・心不全の患者には、現行ではビグアナイド薬の投与は禁忌である。(但し、2010年5月10日より発売になったメトグルコに関しては、高齢者や軽度腎機能障害者には慎重投与となっている。この場合も2週間処方を厳守し、副作用の発現などに十分注意すること)

・SU薬ベースで治療中の患者でシタグリプチン・ビルダグリプチン・アログリプチンを追加処方する場合、SU薬は減量が望ましい。SU薬・ビグアナイド薬の併用にシタグリプチン・アログリプチンを追加投与する場合は一層の注意を要する(ビルダグリプチンは、SU薬以外との併用は認められていない)。

https://www.nittokyo.or.jp/uploads/files/recommendation_incretin.pdf

このように、SU薬との併用に際しては用量上限の目安量を考慮したうえで慎重に投与する必要があり、併せて肝機能や腎機能の評価を定期的に行っていくことが重要であると言えます。

特徴・留意点

重大な副作用として、急性膵炎や水疱性類天疱瘡、間質性肺炎などがあるため、初期症状が認められた場合は適切かつ迅速な対応が必要になります(詳細については、ジャヌビア錠の添付文書参照)。

また、筋骨格系及び結合組織障害としてRS3PE症候群が挙げられます。RS3PE症候群という名称は、remitting(予後の良い)、seronegative(リウマチ因子陰性)、 symmetrical(対称性)、 synovitis with pitting edema(手背足背の圧痕浮腫を伴う滑膜炎) の頭文字から構成されています。主な症状としては、比較的急性発症であり、左右対称性の滑膜炎による末梢関節痛や両側手背・足背の圧痕を残す浮腫、手指屈筋腱の炎症による疼痛が見られます。

繰り返しにはなりますが、副作用の項でも述べたように、単独投与による低血糖のリスクは低いものの、SU薬など他剤との併用時には低血糖が出現する可能性があるため注意を要します。

まとめ

今回の学習を通して、DPP-4阻害薬の種類の多さに驚くと同時に「覚えるのが大変だなぁ」と感じたのが正直な感想です。日常業務の中で、ジャヌビアやグラクティブ、トラゼンタなどの処方はよく見かけますが、配合剤に関してはほとんど目にする機会がないため、知識として頭の片隅に入れておくことが大切であると思いました。特に、メトホルミンとの配合剤については、以前に別記事で紹介したように造影剤検査時の休薬が必要なため、聞き慣れない薬剤の取り扱いには注意し、主治医や薬剤師に確認することが大切であると感じました。次回は「SGLT2阻害薬」について紹介します。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

総合病院の一般病棟で働く看護師です。
日々の自己学習や趣味の記録としてブログを活用しています。

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次