経口血糖降下薬シリーズ第4弾。今回は「αーグルコシダーゼ阻害薬」についてのお話です。
主なαーグルコシダーゼ阻害薬
機序 | 一般名 | 主な販売名 | 備考 |
インスリン分泌非促進系 | アカルボース | グルコバイ錠 50mg/100mg |
1型糖尿病患者において、インスリンとの併用可能。 耐糖能異常における2型糖尿病の発症抑制に用いる(ボグリボース0.2mg錠のみ)。 |
ボグリボース | ベイスン錠 0.2mg/0.3mg |
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ミグリトール | セイブル錠 25mg/50mg/75mg |
作用
食べ物に含まれる炭水化物(デンプン)は、アミラーゼという消化酵素によって二糖類(ショ糖、マルトースなど)へと分解されます。二糖類のままの状態では腸から吸収できないため、消化酵素の働きによって単糖類(ブドウ糖)まで分解される必要があります。
二糖類から単糖類へ分解する時に働く酵素がαーグルコシダーゼです。αーグルコシダーゼ阻害薬(α-GI)は、小腸粘膜上皮において二糖類分解酵素(αーグルコシダーゼ)の働きを抑えることによって、糖質の消化・吸収を遅延させる作用があります。二糖類から単糖類への分解を遅らせることにより、食後の高血糖を抑制することに繋がります。
適応
空腹時血糖がさほど高くない食後高血糖に適します。糖尿病の食後過血糖の改善に用いるとされています(ミグリトールの添付文書参照)。
副作用
・腹部症状・・・腹部膨満・鼓腸や放屁の増加などの腹部症状を高頻度に認めます。通常は少量から開始し漸増することで腹部症状は軽減することが多いですが、腹部手術歴がある患者や腸閉塞の既往歴がある場合には十分注意する必要があります。
・低血糖・・・単独投与では低血糖をきたす可能性はきわめて低いですが、他の糖尿病治療薬との併用時に低血糖が出現した場合には、ブドウ糖を10g程度服用させる必要があります。二糖類であるショ糖(砂糖)では低血糖の回復効果が乏しいため、常にブドウ糖を携帯することが大切です。
・肝機能障害・・・黄疸やAST(GOT)・ALT(GPT)の上昇を伴う重篤な肝機能障害の報告があるため、定期的な肝機能検査が必要です。
また、重大な副作用として以下の記載があります。
重大な副作用(類薬)
ミグリトール添付文書より引用
重篤な肝硬変例での意識障害を伴う高アンモニア血症:類薬(ボグリボース)で重篤な肝硬変例に投与した場合、便秘等を契機として高アンモニア血症が増悪し、意識障害を伴うことがあるので、排便状況等を十分に観察し、異常が認められた場合には直ちに投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
特徴・留意点
先述したように、この薬剤は小腸内での糖質吸収を遅らせる働きがあります。言い換えると、α-GIと食物が混在することで効果を発揮するため、食事を開始する直前(食直前)に服用することが求められます。食後内服では効果が期待できないため、服薬のタイミングに注意が必要です。
あくまでも炭水化物(糖質)の吸収速度を低下させるのであり、吸収量を低下させるわけではありません。最終的には摂取した糖質は全て吸収されるため、食事療法を遵守した上で服用することが重要です。
まとめ
糖尿病治療薬には食前に服用するものや食後に服用するものがあり、患者さんによっては日常生活や仕事等との兼ね合いによって正しいタイミングで服用できていないケースも見受けられます。薬の作用を学ぶことにより、「なぜ食直前に内服する必要があるのか?」を理解しやすくなりますね。今回学習したことを日々の看護場面でも活かしていければと思います。次回は「チアゾリジン薬」について紹介します。
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